寿命は延びても「健康寿命」との差が広がる? 日本人の高齢化と課題

2025-03-25
寿命は延びても「健康寿命」との差が広がる? 日本人の高齢化と課題
毎日新聞デジタル

日本の平均寿命は世界トップレベルですが、その伸びしろは限界に近づいているかもしれません。2021年の平均寿命は85.2歳と、過去30年間で5.8年延びました。しかし、慶應義塾大学などの研究チームが発表した解析結果によると、「何らかの健康問題を抱えて生活する期間」も同時に伸びており、健康寿命との差が拡大しています。

この研究は、日本の高齢化が進む中で、単に寿命を延ばすだけでなく、健康で過ごせる期間を延ばすことの重要性を示唆しています。健康寿命とは、日常生活に支障をきたす病気や障がいがない状態で生活できる期間のことです。平均寿命と健康寿命の差が大きいということは、高齢になっても病気や介護を必要とする期間が長いことを意味します。

健康寿命の現状と課題

日本の健康寿命は、平均寿命に比べて約10年短いと言われています。つまり、85歳まで生きても、そのうち約75年間は病気や障がいと闘いながら生活している可能性があるのです。この状況は、高齢者本人だけでなく、介護する家族や社会全体にとっても大きな負担となります。

健康寿命の差が広がる背景には、生活習慣病の増加、医療技術の進歩による延命効果、そして社会経済的な要因などが考えられます。例えば、食生活の乱れや運動不足、喫煙、過度の飲酒などは、生活習慣病のリスクを高め、健康寿命を短くする可能性があります。

健康長寿社会に向けて

健康長寿社会を実現するためには、個人の生活習慣の改善だけでなく、社会全体での取り組みが必要です。具体的には、以下のような対策が考えられます。

  • 予防医療の推進: 定期的な健康診断や人間ドックの受診を促し、病気の早期発見・早期治療に繋げる。
  • 生活習慣病対策: 食生活の改善、適度な運動、禁煙、節酒などを推奨する。
  • 介護予防: 高齢者が住み慣れた地域で安心して生活できるよう、介護予防教室や訪問介護サービスの充実を図る。
  • 社会保障制度の充実: 高齢者の医療費や介護費を軽減し、経済的な負担を軽減する。
  • 地域包括ケアシステムの強化: 医療、介護、福祉などのサービスを一体的に提供し、高齢者のニーズに応じたサポートを行う。

今回の研究結果は、私たちに健康寿命の重要性を改めて認識させるとともに、健康長寿社会に向けた新たな社会的アプローチの必要性を訴えています。単に寿命を延ばすだけでなく、健康で充実した人生を送れる期間を延ばすことが、これからの日本の課題と言えるでしょう。

研究チームは、今回の研究結果を基に、健康寿命を延ばすための具体的な対策を検討していく方針です。

(参考:The Lancet Healthy Longevity)

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