地方の人口減少、深刻化する女性流出:自治体を揺るがす「静かなる有事」とは?

2025-07-13
地方の人口減少、深刻化する女性流出:自治体を揺るがす「静かなる有事」とは?
読売新聞

地方の人口減少、深刻化する女性流出:自治体を揺るがす「静かなる有事」とは?

地方自治体は、出生率の低下に加え、女性の県外流出という深刻な問題に直面しています。栃木県が設置した「県人口未来会議」の初会合では、「出生率の問題に加えて、女性の県外流出が大きな課題で、『静かなる有事』だ」という声が上がり、自治体の危機感が浮き彫りになりました。

この問題の根底には、男女間の賃金格差が存在します。政府が2023年の統計に基づいて算出している「男女間賃金格差」は、都道府県別に比較され、栃木県では71.0%と全国で最も高い水準です。これは、男性の賃金を100とした場合、女性の賃金が71%に過ぎないことを意味します。

男女不均衡がもたらす影響

男女間の賃金格差は、女性のキャリア形成や経済的自立を阻害し、結果として地方を離れる動機となります。地方では、都市部に比べて賃金格差が大きく、女性が能力を十分に発揮できない、キャリアアップの機会が少ないといった状況が考えられます。また、育児や介護といった負担も女性に偏っていることが多く、地方における仕事と家庭の両立が難しいという現実があります。

このような状況が重なり、地方を代表する女性たちが都市部へと流出することで、地域経済の活性化や社会の維持が困難になる可能性があります。特に、子育て世代の女性が流出することで、出生率の低下をさらに加速させ、「静かなる有事」を深刻化させる恐れがあります。

自治体の危機感と対策

栃木県をはじめとする地方自治体は、この問題の深刻さを認識し、様々な対策を講じています。「県人口未来会議」では、女性の活躍を促進するための政策や、子育てしやすい環境整備、地域経済の活性化策などが議論されています。

具体的な対策としては、以下のものが挙げられます。

  • 賃金格差の是正:企業に対し、男女間の賃金格差を是正するよう促すインセンティブや、女性が活躍しやすい職場環境の整備を支援する制度の導入
  • 多様な働き方の推進:テレワークや時短勤務など、柔軟な働き方を導入することで、育児や介護と仕事の両立を支援
  • 子育て支援の充実:保育所の増設や待機児童の解消、子育て相談窓口の設置など、子育てしやすい環境を整備
  • 地域経済の活性化:女性が活躍できる産業の育成や、起業支援など、地域経済の活性化に繋がる政策の推進

未来への提言

地方の人口減少と女性流出は、日本の未来を左右する重要な問題です。自治体だけでなく、企業や地域社会全体でこの問題に取り組み、女性が希望を持って地方で活躍できる社会を築き上げていく必要があります。そのためには、賃金格差の是正、多様な働き方の推進、子育て支援の充実、地域経済の活性化といった多角的な対策が不可欠です。

「静かなる有事」を乗り越え、持続可能な社会を実現するためには、地方と都市部の連携を強化し、女性が活躍できる環境を整備していくことが重要です。

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