「苦痛が少なかった」と遺族が感じたがん末期の患者は37%? 緩和ケアの現状と課題
がん患者の最期における苦痛:遺族の声から見えてくる課題
国立がん研究センターの調査報告によると、がん患者が亡くなる1カ月前の状況について、遺族が「苦痛が少なく過ごせた」と感じた割合はわずか37%という結果が出ました。このデータは、がん末期の患者さんの苦痛緩和ケアが十分に提供されていない現状を示唆しており、今後の医療現場における課題を浮き彫りにしています。
調査概要と結果
本調査は、2021年に亡くなった20歳以上の患者さんを対象に、2024年2月から4月の間に遺族に質問用紙を送付して行われました。対象はがんだけでなく、心疾患など様々な疾患で亡くなった患者さんも含まれています。質問内容は、亡くなる前の1カ月間の患者さんの状態や、苦痛の程度、緩和ケアの実施状況など多岐にわたります。
結果として、遺族が「苦痛が少なく過ごせた」と感じた患者さんの割合は37%に留まりました。これは、がん末期の患者さんが、十分な苦痛緩和ケアを受けられずに、苦痛の中で最期を迎え、その家族も深い悲しみと負担を強いられている現状を表しています。
緩和ケアの現状と課題
緩和ケアとは、がんなどの重い病気の人に対し、病気の進行や症状による苦痛を和らげ、生活の質を改善することを目的とした医療です。身体的な苦痛だけでなく、精神的な苦痛や社会的な苦痛にも対応し、患者さんとその家族をサポートします。
しかし、日本では、緩和ケアが十分に普及しているとは言えません。医療機関によっては、緩和ケアに関する知識や体制が不足している場合があり、患者さんが適切な緩和ケアを受けられないケースも少なくありません。また、緩和ケアに対する社会的な理解も十分とは言えず、患者さんが積極的に緩和ケアを求めることが難しい状況もあります。
今後の展望
今回の調査結果は、緩和ケアの重要性を改めて認識させるとともに、今後の課題を明確にするものです。今後は、以下の取り組みを進めていく必要があります。
- 医療機関における緩和ケア体制の充実
- 緩和ケアに関する医療従事者の育成
- 緩和ケアに対する社会的な理解の促進
- 患者さんが気軽に緩和ケアを相談できる環境の整備
がん患者さんの苦痛を和らげ、穏やかな最期を迎えられるよう、医療関係者、患者さん、そして社会全体が協力して取り組んでいくことが求められています。