香港証券取引所、25年の歩みとアジア金融センターとしての未来:市場関係者が語る現状と展望

2025-07-02
香港証券取引所、25年の歩みとアジア金融センターとしての未来:市場関係者が語る現状と展望
日本経済新聞

香港証券取引所:アジア金融センターとしての地位を確固たるものに

6月、香港証券取引所は上場25周年を迎えました。この節目を記念し、同取引所はアジアの金融センターとしての存在感を高めるべく、新規株式公開(IPO)の規程緩和や中国本土との相互取引(ストックコネクト)制度の強化といった様々な取り組みを進めてきました。しかし、覇権を争うシンガポール取引所も市場改革を積極的に推進しており、競争は激化の一途を辿っています。

本稿では、シンガポールなどと比較した香港市場の現状と今後の展望について、市場関係者へのインタビューを通じて詳しく解説します。世界的な金融混乱の時代において、香港がどのような役割を担っていくのか、その可能性に迫ります。

香港市場の現状:強みと課題

香港市場は、長年にわたりアジアにおける主要な金融ハブとしての地位を確立してきました。その強みは、まず、中国本土との地理的・経済的な近接性にあります。ストックコネクト制度は、中国本土の投資家が香港市場を通じて、香港市場の投資家が中国本土市場に投資することを可能にし、両市場の活性化に大きく貢献しています。

また、香港は国際的な金融機関が多数拠点を構えており、高度な金融サービスを提供できるインフラが整っています。さらに、法制度の透明性や知的財産権の保護といった点も、投資家にとって魅力的な要素となっています。

一方で、香港市場にはいくつかの課題も存在します。近年、米中間の貿易摩擦や地政学的なリスクの高まりが、投資家の不確実性を増大させています。また、シンガポール取引所との競争も激化しており、香港市場のシェアを維持・拡大するためには、さらなる改革が必要とされています。

シンガポールとの比較:競争と共存

シンガポール取引所も、アジアの金融センターとしての地位を確立するために、積極的に市場改革を進めています。特に、ESG投資やテクノロジー関連企業のIPOを強化しており、香港市場との差別化を図っています。

香港とシンガポールは、それぞれ異なる強みを持っています。香港は中国本土とのつながりが強く、大規模な資金調達を求める企業にとって魅力的な選択肢となります。一方、シンガポールは、より安定した政治環境や規制環境を提供し、長期的な投資家にとって魅力的な選択肢となります。

両市場は、互いに競争関係にありますが、同時に共存関係にもあります。アジア地域の経済成長に伴い、両市場の役割はますます重要になっていくでしょう。

市場関係者が語る香港市場の展望

大和日華企業諮詢の熊力氏は、「香港は世界金融混乱の緩衝材としての役割を担うことができる」と述べています。その理由として、香港の多様な金融市場、高度な金融サービス、そして中国本土とのつながりを挙げています。

熊力氏は、香港市場の今後の成長には、イノベーションの促進とデジタル化の推進が不可欠であると強調しています。また、ESG投資の拡大や、新たな資金調達手段の導入も、香港市場の競争力を高める上で重要になると指摘しています。

まとめ

香港証券取引所は、上場25周年を機に、アジアの金融センターとしての地位をさらに確固たるものにするべく、積極的な改革を進めています。競争は激化していますが、香港市場には依然として大きな可能性が秘められています。市場関係者の意見を参考に、香港市場の今後の動向に注目していきましょう。

おすすめ
おすすめ