【解説】九州大雨の発生メカニズムとは? 2021年の「戻り梅雨」との共通点と今後の見通し
2025-08-12
毎日新聞
9月9日から11日にかけて九州北部を襲った記録的な大雨。その原因とメカニズムについて、気象専門家が解説します。
9月9日から11日にかけて、九州北部を中心に甚大な被害をもたらした大雨。多くの人がその原因とメカニズムに疑問を感じているのではないでしょうか。九州大学大学院の川村隆一教授(気候力学)は、今回の災害が2021年8月に九州など広い範囲で記録的な大雨をもたらした「戻り梅雨」と非常によく似たメカニズムで発生したと指摘しています。
2021年の「戻り梅雨」との共通点:水蒸気の合流
川村教授によると、今回の九州大雨と2021年の「戻り梅雨」の共通点は、異なる発生源から生じた二つの水蒸気が九州付近で合流したという点にあります。具体的には、以下の2つの水蒸気が関与しています。
- アジアモンスーン: インド洋や南シナ海、アジア大陸から発生する水蒸気。
- 太平洋高気圧: 太平洋高気圧の張り出しによって運ばれてくる水蒸気。
通常であれば、これらの水蒸気は九州付近でうまく合流しませんが、今回の気候状況では、両方の水蒸気が集まり、大気中に大量の水蒸気が供給されることになりました。これが、記録的な大雨につながったのです。
今回の気候状況の特徴
今回の気候状況の特徴として、以下の点が挙げられます。
- 偏西風の蛇行: 偏西風が蛇行し、九州付近に湿った空気を引き込みやすくなった。
- 暖かく湿った空気の供給: 太平洋高気圧が発達し、暖かく湿った空気を大量に供給した。
- 上空の寒気: 上空に寒気が流れ込み、大気の状態が不安定になった。
これらの要因が複合的に作用し、九州北部では非常に強い雨雲が発生し、短時間に大量の雨を降らせたのです。
今後の見通しと注意点
今回の雨は一応一段落しましたが、今後も同様のメカニズムで大雨が発生する可能性は否定できません。気象庁の発表する最新の気象情報に注意し、早めの避難を心がけましょう。特に、河川の増水や土砂災害には十分警戒してください。
今回の解説が、九州大雨のメカニズムを理解し、今後の防災に役立てば幸いです。