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2021年の東京オリンピックは、多くの人々に感動と興奮を与えた一方で、社会の深い歪みを浮き彫りにしました。パンデミックが猛威を振るい、世界中で毎日1万近い人々が命を落としていた中、大規模な国際大会の開催は、感染リスクの増大という現実と向き合うことを強要されました。

医療現場からは、感染急増への懸念の声が上がり、大会開催の是非を巡る議論は白熱しました。しかし、経済効果や国家威信を優先し、強引に大会は開催されたのです。

私は、スポーツジャーナリストとして東京オリンピックを取材する中で、社会の底辺で生きる人々、つまり「こぼれ落ちる人々」の存在を強く意識せざるを得ませんでした。彼らは、オリンピックの華やかな舞台とは無縁の世界に置き去りにされ、その苦しみは誰の目にも映らないのです。

例えば、コロナ禍で仕事を失い、生活困窮に陥った人々。生活保護の申請をためらい、なんとか生きていこうと必死になっている人々。彼らは、オリンピックの成功を祝う声を聞くたびに、心の底から絶望を感じていたのではないでしょうか。

また、地方の過疎化が進み、高齢化が進む地域。若者の流出により、コミュニティの維持が困難になっている地域。彼らは、東京オリンピックがもたらす経済効果をほとんど享受できず、むしろ、地域経済の疲弊を加速させるのではないかと不安に思っていたのではないでしょうか。

東京オリンピックは、確かにスポーツの祭典であり、日本の魅力を世界に発信する機会となりました。しかし、その一方で、社会の不均衡を拡大させ、格差を固定化させるという負の側面も抱えていたのです。

私たちは、東京オリンピックの経験を教訓に、社会の底辺で苦しむ人々への視線を改めて注ぎ込む必要があります。彼らの声に耳を傾け、彼らが安心して暮らせる社会を築いていくことが、私たちに課せられた使命なのです。

スポーツは、人々に感動を与え、希望を与える力を持っています。しかし、その力を最大限に活かすためには、社会の不均衡を是正し、全ての人々が平等に機会を得られる社会を実現することが不可欠です。

東京オリンピックは、私たちにそのことを痛感させました。この経験を無駄にせず、より公正で、より包容力のある社会を築いていくために、私たちは行動を起こさなければなりません。